映画「いぬやしき」 感想 頑張れ心臓マッサージ
止まらない漫画実写化。私自身は漫画が実写化されることに関しては何度もあることだし、別に構わないのではと思ってます。出来が良ければ。
実際、実写映画が気になって原作を手に取った作品も多い訳で…(東京喰種や亜人がそうでした)
てなわけで今回見たのが「いぬやしき」。ただし、今回は原作未読です(メタいことを言うとお金が無かったのだ…)。多少ストーリーやキャラを知ってる程度。
大まかなあらすじなんかは、他の方の感想、レビューサイトにも載ってると思うので、割愛で。
※以下ネタバレ注意です!また、ここではこの作品そのものを「いぬやしき」、主人公は「犬屋敷」と表記します。
まずは点数。10点満点計算で。
7.5点。
漫画実写化以前に、一本の映画として割と纏まっていたいた作品だと思います。まあ当然穴もあるわけですが、まずは良かった点から。
良かった点
・圧巻のCGとカメラワーク
佐藤監督らしく、CGに気合入れてましたね。今回比較対象として「アイアンマン」を例に取りましょう。というか、ぶっちゃけ和製アイアンマンと言っても過言ではないです。(音楽担当の方も、海外の演奏者に同じ説明をしていたらしいです)
日本では初となる試みを多く試みたといういぬやしき。主演の木梨さん、悪役の佐藤さんは一部のシーンを全てCGで表現されたりと、結構CGを使ってました。さらにCGは芸が細かい。
例えば、犬屋敷が初めて自分がロボットになったと気づくシーン。細かい顔の表情を完璧に再現しています。
ん?普通じゃね?と思った方、いらっしゃると思いますが、なんとこのシーンは「全身CG」なんです。顔は当然ながら、その他のパーツもCG。邦画でここまで綺麗で繊細なCGを見たのは割と久しぶりな気がします。どこがCGでどこが実写か分からなくなるほどにはCGは良くできています。
ただ、後ほど述べますが、ちょっと足りない部分があって、そこさえ除けば、高水準のCGでしたね。後でアイアンマンと比較します。
カメラワークも、迫力がありながらも、見にく過ぎない、ちょうどいいカメラワークでした。クライマックスのシーンはテンポもいいので、ワクワクしながら見た人も多いと思います。
・主演二人の演技
キャストが決まった時には(他の実写に比べれば全然だが)賛否両論ありましたが、ほんとにいい演技っぷりでした。木梨さんは、序盤ではなよなよした頼りない、かわいそうなじいさんを演じてくれましたし、後半のシャウトも何度も出して声枯れないの?ってレベルで叫んでいましたね。後、個人的に注目してもらいたいのは口の演技。すごい細やかに口を動かしてるんですよ。セリフだけにとどまらない演技力にはびっくりです。
今作で初めて悪役を演じた佐藤さん。(実写映画に出演されるたびに中二病っぽさが増えてる気がする彼ですが)悪役似合ってるな、と思ってました。むしろなんでいままで悪役やらなかったの?っていうほど。「バン!」の言い方も冷酷さを全面に押し出したような言い方でとても悪役してました。亜人の永井役よりもかなり似合ってたと思います。
・実写でありがちなストーリーの積み立てが丁寧
2時間弱という尺の都合上、実写では大切なシーンがカットされ、ストーリーわけわかめ状態になることも多いですが、いぬやしきでは、犬屋敷の家庭環境、獅子神の家庭環境ともに結構しっかり描かれてましたね。二人が能力に気づいてからバトルまでの流れの間の過程を描いていて、明らかに他の実写とは目指しているところが違うな、と思わされましたね。アクション映画ながらも、いぬやしき原作でのテーマも抑えていて、やはり邦画が目指すのはこれなんだよ!と言わせられる映画に仕上がっていました。
気になった点
ちょくちょく、ん?と思ったところがあったのでそこをピックアップ。
・犬のはな子が犬屋敷に懐いた時の謎の壮大さ
序盤で拾ってきた柴犬の「はな子」を捨ててくるように妻に言われ、渋々はな子を捨てに行くシーン。ためらいながらもはな子を道で離すが、はな子は犬屋敷に懐き、家族のだれにも信用されていなかった犬屋敷は、はな子に抱きつき、泣きじゃくる…というシーンなのだが、曲がやたら壮大。犬に懐かれてこんなBGM流されたら、中井貴一さん同様犬の映画かと思っちゃいます。もう少し抑えて欲しかったです。
・なんで佇んでるか分からない獅子神
夜の公園で主人公の二人は事故に巻き込まれるわけですが、犬屋敷はしっかり公園に行くまでのシーンがあるのに対し、高校生がなぜか夜のベンチに座ってるという謎の状況で獅子神登場。最近の男子高校生って夜の公園に行ったりするんですかね…これを見ている男子高校生諸君はぜひ事の真相に答えを出して欲しい。
・獅子神が能力を使いこなすタイミングが早すぎる
事故の翌日の昼にはチョッコーに鳥の殺害を披露する。待って、早い早い。犬屋敷も日常生活を通して徐々に理解するのに、いくら高校生と言えど、わずか半日でほとんどの能力を使いこなしている。我々ゲーマーですら、操作方法が書かれた格闘ゲームに慣れるには時間がかかるというのに…
・中盤に多いやたら長いカット
多分この映画が一番直すべきところ。特に獅子神が、嫌いな父親を殺そうとするシーン。結局躊躇って撃たないんですけど、悩みながら棒立ちするカットが結構長い。せっかく限られた尺なのに、こんなところで尺使うのもったいない…。BGMがないのも見る人には辛いかもしれませんね~。
・しおんちゃん関係
演技が悪い、とは思いませんが、口下手キャラを何か根本から勘違いしてる感じがあります。単純に言うのが遅い、じゃなくて言葉がうまく出てこない、繋げられないのが口下手、だと思うんですが、やはりただ喋るのがゆっくりってキャラになってた気がします(原作読んでないから詳しいキャラ位置付けは分かってないですが、それは言わないお約束)。
そして、獅子神と一緒に空に飛び、半ば無理やりな二回目の告白をするわけですが、獅子神のエンジンの音でセリフが全く分からない。おかげで恋愛感情に乏しい方はなんで獅子神がしおんと一緒にいることになったのか分からない状況に…。エンジンの主張が激しすぎた、残念なシーンでした。
・伊勢谷さんの出番が予想以上に少ない
予告のクレジットでは主役級に並んでいたのに、本編での出番はわずか数分。もう少し頑張ってくれても良かったんじゃ…。
・少し派手さが足りない
アイアンマンと比較すると足りないのがここ。新宿の大量虐殺はいいんですけど、ミサイルを使って建物を破壊するのも、割と各地をぽつぽつ破壊していく感じ。もう少し派手にやって欲しかったなぁという願望です。
・心臓マッサージ
終盤で犬屋敷が娘の麻里を救うシーン。自身の能力でもケガを治せず、心臓マッサージを始めるのですが…
心臓マッサージって、へその上、ちょうど骨が二手に分かれるところの上ぐらいに手を当てて心臓マッサージするんですが… 犬屋敷はなんと鎖骨の下付近を必死にマッサージ。それじゃあ娘さん生き返らない。
だれも気にならなかったんでしょうか…。まあ女性相手なので気を遣うのは分かりますが、そこはCGでなんとか…無理でしたか…。
数えると案外多かったですが、あくまでこれは本編でのテンションを著しく下げるほどの物ではない事を言っておきます。
続編の可能性ついて
一応、獅子神が犬屋敷に右腕と脇腹を破壊されて戦いは終了、なのですが、主演達のクレジットの後、ラストの〆がまさかのチョッコーのシーンに。チョッコーが部屋に戻ると、なぜかそこには獅子神が。そして、しばらく話した後に「お前は変わらないな」と言われて部屋から消え去るというシーン。
巷では続編が噂されてますが、単純に行方不明の獅子神がどうなったのか、ということを示唆しただけなのでは…と思っています。
原作にあった獅子神の改心、隕石のくだりが無かったので、もし続編があるなら、これらが取り入れられるんでしょうか。
グロ表現、単純に見ていて心が痛くなることについて
R指定こそないですが、この映画はオタクだろうが社会人だろうが高校生だろうがじじいだろうが幸せな一家であろうがお構いなく殺すので、豆腐メンタルの方は気を付けましょう。獅子神が追われる原因となる一家殺害事件に関してはめちゃくちゃかわいそうなので、苦手な方は見ない方がいいです…。結構胸糞物です(宮根さんニュースアナウンサーももちろん殺されます)。
総評
もう少し物足りない、というところはありましたが、それ以上に基本的な出来は良かったと思います。気になってる方はぜひ劇場へ。
ただし、恋人や家族と一緒に見に行くと微妙に後味悪いかもしれません。序盤から容赦なく現実を見せびらかしてくるので…。
実写映画としてはやはり比較的いい出来でした。新宿での戦闘シーンは必見!
ご閲覧ありがとうございました!
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